18.ニ次相続も睨んだ生命保険戦略
一次相続(配偶者の一方が亡くなった時)では、相続財産の半分までか、1億6千万円までの、妻の相続に関しての課税はありません。これには、相続を世代間の財産移転として捉えるという観点から、夫婦間の移転には課税しない、夫婦の財産形成に寄与しているので課税しない、といったことが背景にあるわけですが、ニ次相続の場合、この配偶者の非課税枠の特例がありませんので、相続税額も大変大きくなってしまいます。そこで、ニ次相続のときの税金をどうするかという対策が、必要なケースも出てきます。
できるだけニ次相続を軽くする為にも、一次相続時の妻の受取る財産も、消費してしまうようなものが望ましいのですが、なかなか全部をそうするわけにいきません。特に夫婦で今まで住んでいた家を、いきなり子供の名義にするのには、妻の抵抗が大きいのではないでしょうか。
まずは手始めに検討に値するのが、住居用財産の贈与です。結婚20年以上の場合2千万円までの住居用財産の贈与は非課税になりますので、これはすぐ実行できます。それと、妻の寡婦時代の生活についての経済的な保障をきちんと手当てしてあげることが大事です。その上で、ニ次相続をどうすべきかを考えることになります。妻が寡婦ですごす時間は、男女の平均寿命の差+夫婦の年齢差と、一般的には想定できます。その間の生活を支える経済的な基盤がまずは必要ということになります。それと現在長男と同居しているようだと、老後の介護といったことで長男の嫁にかなり負荷がかかることなどが予測されます。
例えば夫が亡くなり、妻が介護状態になった場合、長男の嫁が甲斐甲斐しく看病してくれている、まさにその時、長男も亡くなったとすると、その時、嫁は妻の相続人ではなくなりますので、いくら介護を一生懸命下といっても、財産を全く受け継ぐ権利がありません。このような事態に備えて、なにか手を打つといったことも、場合によっては想定しておくべきことがらです。法律を知らないと、イザそのような事態になっても、全く備えをしていないということになってしまいます。そのために例えば、長男の妻を養子縁組したり、受取人にした保険を用意するということも考えられます。
ニ次相続用の保険の具体的な考え方は以下の通りです。やはり納税資金を準備するという見地から、妻を被保険者とする、終身保険が第一義ということになります。その際に、夫の現金をそのまま保険会社に預け、一時払いまたは短期の全期前納の変額終身保険にすると面白いプランになります。銀行においていてもほとんど金利が付かないものが、一時払いまたは短期の全期前納払いの保険で資金運用すると、払い込んだ保険料の倍近い保険金額を受取るような設計が可能ですので、これを2次相続の相続税原資にするといいと思います。
因みに、ある保険会社の1億円の変額終身保険の3年払込全期前納の保険料は
50歳女性 総保険料 5371万円
55歳女性 総保険料 5537万円
60歳女性 総保険料 5926万円
65歳女性 総保険料 6442万円
70歳女性 総保険料 7064万円
75歳女性 総保険料 7795万円
80歳女性 総保険料 8671万円
となっていて、銀行での資金運用に比べ、かなり利回り(?)がいいことに驚かれることでしょう。
あくまでひとつの考え方ですが、75歳の女性に1億円の生命保険に加入してもらった場合、平均余命を86歳とすると、7795万円が11年後に1億円になりますので、年換算の単純な単利の利回りは1億円÷7795万円÷11年=2.6% ということになり、銀行利息を大きく上回ります。50歳の女性だと、ほとんど倍返しになりますので、要は保険で現金を倍にして、最高税率の50%を負担しても、また元の額の現金に戻りますので、つまるところ財産の目減りはなかったということになります。(金利のことはさておきまして)こういう方法も相続対策として極めて有効ということです。
また別の保険プランでは、夫婦連生型の終身保険というタイプも面白いでしょう。被保険者を夫婦とし、どちらが先に亡くなってもそのときには保険金を出さずに、最終的に残った方が亡くなったときに、保険金を支払うというものです。これこそ、まさしくニ次相続の為の保険です。
ニ次相続のためにいろいろ手を打っていても、死ぬ順番が逆になってときに効果が出せないというようなこともおこります。いわば「逆順位のリスク」ということですが、多少念頭においておかれた方がいいと思います。いくら精緻な方法で手を打っていても、そのようにならない事態はいくらでも発生します。そのような際には、ある程度、どちらが先に亡くなってもそれなりに対応可能な一種のポートフォリオ(夫婦連生保険のようなプラン)が必要かもしれません。