20.社長の体調が悪く、本人が加入できない場合の生命保険プラン
生活習慣病などで、保険申込時の診査にはねられてしまう方は、大変多くいます。例えば長年糖尿のけがあり、食事療法をしている方。血圧が高い方。心電図を取ると、不整脈や心房細動などの波形が出る方。そういった方が保険医に加入するのは、結構大変です。(高血圧症で降圧剤などできちんとコントロールできている方は、保険会社によっては問題なく加入できるような場合もあります。)
日本人の糖尿病予備軍は1千万人、高血圧症の方が3300万人ともいわれていますので、高齢になればなるほど、保険の加入が難しくなります。しかし保険会社、保険商品によっては、条件付で引き受けるケースもありますので、あきらめる必要はありません。保険種類でいいますと、終身型の保険は加入が厳しいかもしれません。必ず保険会社としては保険金を出す保険ですから、死亡リスクが高いと、当然引受を拒否するということになります。しかし、全損型の逓増定期保険(契約年齢+保険期間×2≦90)であれば、やや診査条件が緩やかになります。その理由としては、全損型の保険の保険期間は、例えば60歳の方であれば15年と比較的短いうえに、解約返戻金のピークが6~8年と短く、ほとんどの契約者が8年以下で解約すると想定される為です。つまり、多少健康上の不安があっても、ここ8年くらいまでの死亡リスクをみればいいわけですので、保険会社としても、引き受けやすいという面があるのではないかと思います。しかし通常の健康な方よりもリスクが高くなりますので、本来100で良かった保険料が、割増で400必要というケースもあるほどです。
しかし、この場合は保険料が高くなってしまうことが、デメリットとばかりとも申せません。保険の数理上、かなりの割増の保険料を頂戴している為、解約した時の返戻率が逆に良くなるといった逆転が起きる場合もあります。さらに、本来は100しか引当できなかったものが、400引当てることができるのですから、かえってラッキーという人もあるほどです。
この保険でも引受不可の場合、どうしたらいいでしょうか。それには身代わりでやる方法があります。身代わりといっても、不正な「身代わり診査」ではありません。そのようなことをしてしまうと、イザという時に肝心の生命保険金が出ませんので、これは一切ご法度です。
ここでいう身代わりとは、健康状態の悪い社長の替わりに、他の役員や幹部社員にリスク管理の一環として、生命保険に加入してもらい、社長勇退時にそれらの含み益を出す方法を言います。これですと、全く問題ないどころか、幹部社員への保障というテーマにも見事に合致します。では税務上問題があるのか?いいえ、保険に加入して全額経費で処理するということ、それを解約して益出しがなされるということ、社長に退職金を払い、経費計上すること、そのいずれもが独立した取引で、全く問題になる要素がありません。結果として、社長の退職引当金として機能したということになります。ただ違いは、社長に万一のことがあった時、社長自身には生命保険がかかっていないという点だけです。幹部社員以外で同じ効果が出せる保険もあります。これは社員を対象にした「福利厚生」プランにします。全額損金、高返戻率この2点がキーポイントです。その用途に最も合致する保険種類は、終身ガン保険か長期傷害保険ということになります。そのパフォーマンスは保険会社各社によってまちまちで、かなりの差があります。また保険金の引受け限度額も役員従業員で異なりますし、加入時の手続きの容易さもかなり差があります。社員構成、従業員の年齢、離職率、投入保険料などなどで、選択すべき保険会社をきちんと使い分ける必要があります。そのためには、多くの保険会社から最も効果的なプランをシミュレートする、保険コンサルティングを実践できる「乗合代理店」にお願いすることが、最もよいやり方です。
従来からある、全員加入の養老保険を利用する方法もありますが、経理処理が半損になってしまうので、少し資金効率が悪くなります。全員加入といった加入要件、死亡時の保険金の扱いなど、養老保険の利用はこれまた十分な考察が必要です。