24.損保と同じ効果が出せる生命保険
生命保険と損害保険はその目的が全く違うわけですが、生命保険でありながら損害保険と同じ効果が出せる方法があります。
生保と損保、同じ保険というジャンルでありながら、守備範囲が全く異なっています。 損保は自動車や火災という風に、保険の目的物の失われる価値が予め測定可能なものが多いです。どんなに損害が出ても、その物の価値以上損失が発生するということはありえません。ですから過剰に保険を掛けていても、実損填補といいまして、失われた価値までしか補填されないというしくみになっています。
それに対し生命保険の場合、人の価値というのはいくらと決められません。損保のように価値を予め測定して加入するわけではありませんので、年収や体格で生命保険の金額が決められるのではなく、自己申告制になっているのが特徴です。1億円の生命保険に加入した人には、死亡時にはその金額が出ますし、あたかも体を使った(寿命に連動する)金融先物商品といった面持ちです。安い保険種類(短期の定期保険)で、加入後すぐに亡くなれば、それこそ大儲けといった側面があるのもこれまた事実です。要は博打と同じじゃあないか、といった意見があってもちっともおかしくありません。その通り、「保険は博打と同じ」なのですから。
しかし、単に博打というには、もう少しスマートなものではないかという気もします。本来その成り立ちの始めは、相互扶助といった単純な仕組みであったものが、社会の複雑化とあいまって、さまざまなオプションを伴いながら今日の生命保険の仕組みが完成したと思われますが、まさにこれは人類が生み出した英知そのものではないかと思います。
さて、その生命保険を法人で導入した場合、主なプランは「役員のキーマン保障」「役員の退職金準備」「従業員の福利厚生プラン」「含み資産形成プラン」等々になりますが、ここで大事な点は、法人生命保険は経理上損金経理のできるプランが多く、これが企業にとってはある種の損保引当プランとして機能できるということです。つまり、損保の領域はかなり広く、一般的な物損事故への備えの他、PL(製造物賠償責任)やセクハラ、株主代表訴訟といった新しいジャンルまで、それこそ際限がないといっても良いでしょう。当然全てを損害保険で賄うようなことは不可能ですから、たまたま保険が掛かっていないような損害が発生した場合どうするのか、という問題が生じます。
そこで、生保の出番となります。生保で直接損害をカバーしてくれるわけではありませんが、一旦生保を解約しますと、帳簿上解約益と同時に資金が出てきます。要するに、損害を埋める為の原資と、当期の損益のリカバリーショットとなる利益が生み出されるのです。まさに「生保が損保の肩代わりをした」という意味はここにあります。ではその結果、生保による人的保障が中断してしまったことをどうするのか?答は簡単です。一旦含み益を出したら、またそこから、新しい生命保険をスタート(再開)すればいいだけのことです。それほど含み利益のある生命保険というのは、契約者の任意によってどのようにも使える(コントロールできる)という最大の特徴があるのです。