25.法人生命保険を使った個人の節税方法
法人税を圧縮する手法は、損金型の保険を導入することで実現できます。ではなにか個人にもメリットがあるような方法というのはないものでしょうか。思いつくのはせいぜい、生命保険の所得控除くらいですが、年間最大5万円(年金を入れても10万円)の所得控除など、節税というのがおこがましいような気がします。(まあ無いよりはましですが、税金で最大でも5万円をセーブするくらいのことです。)
保険で所得税を圧縮する、これは難問です。日本の税制は法人と個人の体系が全く異なっており、それらの接点というのはほとんどありません。ありうるのは、法人個人間の取引についての、取り決めといったものが中心になると思います。つまり、両者間の売買、貸借、贈与といったと事柄について、どのような所得を生じせしめるかということが、そのポイントです。法人で何か手を打ったものが、個人の所得を減じることになる方法はということかという観点から、いくつかヒントを挙げて見たいと思います。
(1) 5年養老保険の活用
通常の福利厚生プラン(半損型)の契約形態は、契約者=法人、被保険者=役員従業員、受取人=満期・解約時=法人 死亡時=被保険者の法定相続人 という内容になります。
ところがこの保険はいわゆる全員加入という要件があって、導入が難しい面があります。そこでこの保険を、オーナー社長の保険として、契約者=法人、被保険者=オーナー社長、受取人=満期・解約時=オーナー社長 死亡時=会社 という契約形態にした場合、5年ごとに社長に経費で賞与を払うことと同じ効果が出せます。
この場合、保険料の半分は定期保険料ということで販売費および一般管理費になり、残る半分は社長に対する役員報酬(社長は確定申告で所得として申告)ということになります。
つまり全額経費で落とすことが可能です。問題は途中で解約したり、満期になった時の対応です。これは直接保険会社からオーナー社長に振り込まれますので、会社は一切その後の処理はありません。
では、満期金をもらった社長の税金は一体どうなるのか。これは厳密には一時所得ということになると思われます。しかし、養老保険の場合ほとんど差益部分はなく、税金が発生することはほとんどないでしょう。
このプランのメリットは、満期金の半分は法人が経費で落としたものを個人の所得に移転した形になるということです。(実際の導入には所轄税務署の確認が必要です)ただし、この保険の取扱いのできる保険会社は数少ないのが難点です。
(2) 変額終身保険の活用
変額終身保険に法人で加入し、社長勇退時に保険契約そのものを退職金の一部として渡すというケースを考えてみましょう。この場合退職金の計算のベースになるのは、あくまでその時点での解約返戻金ということになります。例えば50歳の社長が60歳で勇退した際の、1億円の変額終身保険の保険料累計5500万円、解約返戻金の額5000万円という場合、会社は退職金5000万円 保険解約差損500万円の経理処理をし、社長は5000万円の退職所得(税務上基礎控除があって更に2分の1課税と大変優遇されている)でほとんど税金は負担せずに、終身の将来価値最低1億円の保険を入手することが可能です。運用が悪いほど社長個人にとっては有利になるという不思議なプランです。
(3) 5年低解約逓増定期保険
逓増定期保険の解約返戻金を当初の5年間かなり押さえたプランが、いくつかの保険会社から出ています。この保険は当初5年間返戻率を押さえることで、安定して信金運用ができるメリットを、6年目以降の返戻金に上乗せしてくれますので、5年後の返戻率は40%でありながら、6年目には90%戻るといったことを実現できます。これを使って節税対策をすることが可能です。つまり5年後にこの保険を社長が会社から買い取ります。そのときの評価は解約返戻金ですから、例えば年間保険料が1000万円で5回投入下段階で買い取ると、1000万円×5回×解約返戻率40%=2000万円が買取価格になります。これを月払いに変更した上で、5年1ヶ月の状況で解約すると、解約返戻金は5000万円×90%=4500万円となります。つまり2000万円で購入下保険が1ヶ月で2倍以上になります。この場合課税はどうなるのか。会社は全額損金で落としていますので、社長から購入した段階で全額営業外収益を計上します。社長は4500万円―2000万円―50万円(一時所得控除)の半分、1225万円が所得(総合課税)。半分税金で持っていかれても3275万円手元に残ります。(さらにいえば、一時所得の認定は極めて難しい面があると思われます。)
(4)低解約返戻金型(解約払戻金抑制型)終身保険
5年払込みで終身保険に加入した場合、保険料払込み期間中は解約返戻金を7割に押さえた終身保険です。5年経過時点の解約返戻金は70%くらいですが、ここで社長にこの保険を譲渡し、その後すぐに解約すると解約返戻率は100%を越えます。つまりこの差3割部分が、会社の保険解約損となり、社長にとってはプラス部分です。このスキームを5年後との役員賞与として利用することもできます。