30.会社が掛捨てで入った生命保険を、社長の相続対策プランとして使う
相続の問題を抱えている場合、当然終身保険に加入しておくべきですが、できればこれを会社で準備してくれたらという経営者の方が多いようです。しかも保険料を資産計上ではなく、損金タイプの保険にしておいて、その保険を退職金として受取った後、終身保険に切り替えれば、税務上メリットがあるという考えの方も多いようです。
これはなかなか鋭い考え方です。保険を退職時に名義書換するということは、即ち保険の残存価値(解約返戻金)で退職金に充当するということになります。その際、最初から終身保険のような資産計上型の保険を渡す場合と、損金タイプで行く場合の違いは、以下のようになります。(退職金を2000万円とした場合で考えてみましょう。)
(1) 資産計上型「終身保険 保険金1億円」退職時保険料払込総額3000万円
(全額資産計上)
勇退時の解約返戻金2000万円
→ 会社の損金経理処理 保険資産取崩し損1000万円
退職金2000万円
(2) 半損計上型「定期保険 保険金1億円」退職時保険料払込総額3000万円
(半分を資産計上)
勇退時の解約返戻金2000万円
→ 会社の損金経理処理 保険資産取崩し益500万円
(2000万円―1500万円) 退職金2000万円
(1) の場合全額資産で積んできましたので、最終的に資産計上額と解約返戻金の差額、1000万円が損失になり、更に退職金2000万円を経費計上しますので、トータル3000万円の負担になります。
(2) の場合はどうでしょうか。退職時まで会社はこの保険料の半分を経費計上していますので、保険料負担として1500万円、さらに退職金として2000万円を負担します。しかし資産計上額と解約返戻金の差額は収益となりますので、プラスが500万円。ということで差引き3000万円となり(1)と同じことになります。
この例でお分かりのように、保険種類が資産計上額であろうと、損金計上額であろうと、最終的にはトータルでいっしょということになります。
ここでメリットを出す為には、終身より返戻率の高い「非喫煙健康体等のリスク細分型定期保険」を活用することが挙げられます。
退職時にこの定期保険を名義書換して、終身保険にするためには、保険会社によって多少違いがありますが、ベースに薄く終身保険を主契約にしてこの定期保険を上載せする方法を取れば、払済みという手法を使って、終身保険に切り替えることができます。(主契約が定期の場合はそのまま一時払い定期保険になります)予定利率が高いときの商品であれば、最初から終身保険で設定するよりも、このような方法で払済みにした方が、結果的に保険金額が多くなり、大変有利です。
この他、資産計上型の終身保険のうち (3)変額終身保険 (4)低解約型利率変動終身保険を使っても、結果的には損金部分の多い、面白いプランが出来ます。
(3) 資産計上型「変額終身保険 保険金1億円」
退職時保険料払込総額3000万円(全額資産計上)
勇退時の解約返戻金1500万円
→ 会社の損金経理処理 保険資産取崩し損1500万円
退職金1500万円
(4) 資産計上型「低解約返戻利率変動型保険 保険金1億円」
退職時保険料払込総額3000万円(全額資産計上)
勇退時の解約返戻金1500万円
→ 会社の損金経理処理 保険資産取崩し損1500万円
退職金1500万円
いずれの場合でも解約返戻金は、通常よりかなり低く押さえられてしまいますので、個人の退職所得にした場合の所得税の負担は相当圧縮することが可能です。
会社は、資産にあげた保険を、最終的には保険解約損として計上していますので、結果的には損金算入の保険(掛捨て保険)と同じように、節税効果が得られています。
このプランのメリットは、会社で保険料負担をし(しかも損金で落としながら終身保険を設定でき)、勇退時に大変低い税負担(退職所得税は2分の1課税)で社長の相続対策の為の保険が出来るということです。
あとは、どこの保険会社のどのプランを使うかという、商品化戦略が要になります。