32.個人型401Kで税制上有利な退職金制度
2001年の確定給付企業年金法と確定拠出企業年金法の成立により、今まで多くの企業が退職(年)金準備のために導入していた「税制適格年金制度」が2012年3月末までに廃止されます。中小企業にとってはその受け皿として、最も使いやすいのが中退共ではないかと思われます。拠出額が全額経費処理できる点は適格年金と同じであり、老齢ではなく退職を給付事由にしている点でも、違和感がありません。
適格年金の横スライドとしての「規約型企業年金制度」や「厚生年金基金」の併用については、運用難や将来債務の不確定ということもあって、選択するメリットは薄いのではないかと思われます。となると、残る選択は確定拠出型年金制度(企業型)いわゆる401kということになりますが、中小企業にとっては、管理コストの負担、投資教育の必要性、中途退職者への対応と様々な問題があり、まだ導入するのに躊躇している企業も多いのではないかと思われます。
ここで登場するのが民間生保です。自由な設計が可能であるという点と、企業による資金のコントロールが可能であるという点が、その大きなメリットとして上げられます。全員加入型養老保険はよく知られているプランですが、それ以外でも、全額損金でかなり高い解約返戻率の生命保険があります。加入中の中退共にこれらを組み合わせて、いいとこどりのオリジナルプランができます。
退職金の前払いという方法も考えてみましょう。単純に前払いをしてしまうと、個人にとっては所得税と社会保険料の負担につながり、企業にとっても社会保険料が負担増となります。そこでぜひお勧めしたいのが、確定拠出型年金のうちの、個人型401kです。中退共との併用も可能です。
年額で21.6万円と拠出額は多くありませんが、これは個人所得から全額控除されますので、所得税・社会保険料ともに個人負担がありません。(企業にとっても社会保険料の負担無し)年末調整・確定申告により、21.6万円にかかる所得税が最終的には還付されますので、仮に20%税率の方であれば、43200円が戻ります。年額5000円ほどの口座管理費がかかりますが、手取38200円÷21.6万円=17.7%という大変高率な金融商品となるのです。拠出額の所得控除は確定的に所得税還付につながりますので、ハイリターンの金融商品と同義であり、さらに運用益についても課税が繰延べられます。運用先として保険会社の元本確保型の商品においておけば、基本的に元本が減るリスクは生じません。60歳時に給付金を一時金で受取ると、退職所得控除も使えますので、中小企業の退職金プランとして大いに活用できます。