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非常勤役員の上手な活用方法とは?税制上のメリットと社会保険への加入義務について解説

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非常勤役員の上手な活用方法とは?税制上のメリットと社会保険への加入義務について解説

公開日 2022年12月11日 更新日 2022年12月11日

中小企業では、代表者の家族(妻、親、子、兄弟など)を非常勤の役員として登記しているケースが多々あります。それは、経営者の家族が法人の役員となることによって所得を分け合い、その結果として法人と個人それぞれの税負担を小さくできるからです。

法人からみれば、家族を「非常勤役員」として役員報酬を払った場合には、法人の経費として処理することができます。

個人からみれば、我が国の所得税は累進課税制度で所得が低い人にはほとんど税金がかからない仕組みですから、事業収入はできるだけ多くの人に分配された方が、税金の発生を抑えることができます。

以上の理由から、経営者の家族を法人の役員とする場合には通常の役員ではなく「非常勤役員」とすることが少なくないのです。では、会社で非常勤役員を設置するには、具体的にどのような方法を取ればいいでしょうか?

この記事では、中小企業が非常勤役員を上手に活用する方法やメリット、注意点について解説します。

非常勤役員とはどんな人?

非常勤役員とは、常勤ではなく会社から要請されたときなどに出社する取締役のことです。

混同しやすい役職として社外取締役がありますが、社外取締役がその役割を会社法上で明確に定義されているのに対して、非常勤役員には法律上の定義がありません。

一般的に、非常勤役員に選任されるのは以下の人です。

  • 優れた経営ノウハウや高い専門性があるが、社外に本業がある人
  • 経営者の家族

中小企業が非常勤役員を設置する理由とメリット

法人が非常勤役員を設置する理由は、主に以下の2つです。

【法人が非常勤役員を設置する理由】

  • 会社の発展・成長が図れる
  • 税金対策ができる

会社の発展・成長が図れる

優れた経営ノウハウや社外の豊富な人的コネクションなどを持っているため、良好な関係を維持しておきたいという人材を非常勤役員として設置しているケースは少なくありません。必要なときに適切なアドバイスを受けることで、会社の成長が図れる可能性があります。

会社の本業とは直接的に関係のない人を非常勤役員にしている場合、こうした理由が考えられます。特に会計・監査や法務の専門家などの場合、複数の企業の非常勤役員を兼務しているケースもよくあります。

税金対策ができる

非常勤役員を置くことで税金対策ができるケースがあります。非常勤役員の設置による税金対策の効果は、主に以下の3つです。

【非常勤役員の設置による税金対策の効果】

  • 非常勤役員に報酬を払って法人税を減らせる
  • 家族や親族に報酬を分散して所得税の負担を減らせる
  • 役員退職金で損金計上する

非常勤役員に報酬を払って法人税を減らせる

非常勤、常勤を問わず、役員に支払う報酬は要件を満たせば損金計上できるため、一定の範囲であれば法人税額を減らすことができます。

ただし、出勤していないにもかかわらず相場以上の多額の報酬を設定している場合、税務調査で否認される可能性があるため、注意が必要です。

家族や親族に報酬を分散して所得税の負担を減らせる

社長ひとりに役員報酬を集中させると、当然ながらそのぶん所得税が増えてしまいます。

そこで、社長の家族や親族を非常勤役員として報酬を分散すれば、所得税を抑えることができます。役員報酬を受け取った家族や親族は給与所得控除を受けられます。

役員報酬は、労働対価ではなく委任契約に基づくという特性上、法外に高額でない限り否認されにくいという特徴があります。特に同族会社の場合に家族や親族を非常勤役員として設置している多いのはそのためです。

さらに、要件を満たせば支払った報酬は損金扱いにすることも可能です。社長の被扶養者であれば健康保険や労働保険といった社会保険料を負担する必要もありません。

【社会保険における被扶養者になるための要件】

  • 年収130万円未満
  • 1日の所定労働時間が正社員の3/4未満
  • 1ヶ月最大の出社日数が正社員の3/4未満

役員退職金を損金計上できる

役員に支払う退職金は、常勤・非常勤を問わず損金算入できます。ただし、役員退職金もあまりに高額になると損金として認められません。損金算入できる金額は、役員として勤務していたときの報酬額や役員在籍年数などによって異なります。

<参考記事>

また、非常勤役員側にとっても退職所得控除という大きな控除を受けられるので、大きなメリットがあると言えるでしょう。損金算入額を増やせるため、例年に比べて利益が多く発生した会計年度に退職金の支払いを合わせるケースも少なくありません。

非常勤役員の報酬の相場は?

一般的に、非常勤取締役の報酬の相場は、月額5万円~15万円ほどが妥当な水準と言われています。

役員報酬は、税務上は給与所得して扱われます。収入が給与所得のみの場合、年間103万円以下であれば所得税は非課税です。そのため、非常勤役員の報酬を月額8万円程度にしているケースも多いでしょう。

過去には「親族に対する非常勤役員報酬が高額すぎる」として、税務調査で否認指摘された事案があります。

<参考記事>

非常勤役員の報酬額を取り決める際には、否認指摘の心配がない妥当な範囲に収めるよう注意しましょう。

非常勤役員の報酬で税対策をするときの留意点

非常勤役員の報酬で税金対策をする場合は、以下の点に注意が必要です。

【非常勤役員の報酬で税対策をするときの留意点】

  • 非常勤役員への社会保険料負担に注意
  • 役員選任のためには登記が必須
  • 勤務実態のない役員報酬は損金計上できない

非常勤役員への社会保険料負担に注意

非常勤役員を設置することで法人にとっては税金対策になりますが、報酬を増やすと社会保険の加入義務があるとみなされる可能性があります。

非常勤役員の社会保険加入は義務?

本来、あらゆる法人は資本金の額や規模に関係なく一人でも従業員がいれば社会保険への加入義務がありますが、非常勤役員の場合には社会保険への加入義務がありません。

ただし、これは加入義務が免除されているだけで、あくまでも非常勤役員の勤務実態次第では加入しなくてもよい、という位置づけです。勤務日数や報酬、監督権などの勤務実態に基づき、複数の材料から社会保険加入の是非が判断されます。

したがって経営者の家族や親族などを非常勤役員として、報酬額や勤務日数があまり多くない場合には、社会保険に加入しなくてもよい可能性が高いでしょう。一方、経営スキルが高い人材などに一定以上の報酬を支払う場合には、社会保険への加入が義務付けられる可能性が高くなると考えられます。

役員選任のためには登記が必須

非常勤役員を新たに選任するためには、役員登記が必須になります。登記の具体的な手順は以下のとおりです。

  1. 株主総会を開催して普通決議で役員を選出
  2. 役員の就任を承諾する
  3. 必要書類の作成と手配
  4. 登記申請

登記は役員就任から2週間以内に申請する必要がありますので、ご注意ください。

勤務実態のない役員報酬は損金計上できない

勤務実態がないにもかかわらず、節税対策のために非常勤役員に報酬を支払っていると認められた場合、損金として認められない場合があります。非常勤役員として報酬を支払っているからには、あくまでもそれに見合う業務をしていることが前提です。架空の役員がいるとして脱税とみなされかねないので、注意しなければなりません。

まとめ

非常勤役員を設置することは税金対策として有効ですが、その他にもさまざまな方法があります。

【法人の税金対策の例】

  • 社員の健康診断
  • 経営者の自家用車を社用車にする
  • 30万円未満の消耗品を購入する
  • 不要な在庫処分
  • 中小機構のセーフティ共済に加入する
  • 法人保険に加入する

<参考記事>

非常勤役員の設置によって、税金対策に繋げることは可能です。

しかし非常勤役員に勤務実態がないなど、明らかに税金対策が設置の目的だと認められる場合、非常勤役員に対する報酬などを損金に算入できない場合がありますので、注意しなければなりません。税制をしっかり理解して、適切かつ効率的な会社経営を行っていきましょう。

税金対策には法人保険の活用もおすすめ

この記事では「非常勤役員」を使った税金対策を紹介しましたが、その他に有効な税金対策としては法人保険を使った方法が挙げられます。法人保険は、経営者の万が一のリスクに備えながら、なおかつ支払った保険料の一部、または全部が損金扱いになります。さらに解約時には「解約返戻金」という形で資金を取り出すこともできるので、ひとつの保険で一石二鳥、三鳥の役割を果たすことが出来るのです。

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