保険アンサー

運営:株式会社トータス・ウィンズ

中小企業の保険の
悩みを解決する
メディア

HOME/ コンサルタントコラム/ 年金、退職金、保険/ 2022年更新:中小企業の退職金はいくら?平均・相場は?

2022年更新:中小企業の退職金はいくら?平均・相場は?

年金、退職金、保険
2022年更新:中小企業の退職金はいくら?平均・相場は?

公開日 2022年3月18日 更新日 2022年4月9日

勤続年数が一定以上になってくると、「自分は退職金をどれくらいもらえるのか?」「一般的な相場はどれくらいなのか?」と気になる方も多いのではないでしょうか。

退職金は、老後の生活を支える大切な収入です。しかしその金額は、「企業規模」「退職理由」「学歴」「勤務先の業種」「職種」「勤続年数」「基本給」などによって大きく異なります。

今回は主に

  • 中小企業の経営者
  • 中小企業に勤務している方

向けに、退職金の相場や平均額、不足する場合の対策などについて、公的な調査結果等をもとに解説します。将来の資金計画の参考にしてください。

退職金の相場や平均額はいくら?

まず最初に、全体的な退職金の相場や平均額を見ていきましょう。

「中央労働委員会 令和元年賃金事情等総合調査」によると、

【2018年(平成30年)の退職事由別平均退職金額】

  • 定年退職 1,219万円
  • 会社都合 1,300万円
  • 自己都合     414万円

となっています。退職の理由(定年退職/会社都合/自己都合)によって、支払われる退職金が大きく違いますね。

退職金の算定方法は会社によって大きく異なります。同じ会社に勤務されていた方でも、退職理由や最終学歴・職種などによって算出方法が異なるケースがほとんどです。

そして、最も大きいのが企業規模による違いです。定年退職された場合の退職金相場額を大企業・中小企業別に比較してみましょう。

<以下の表数値・出典>
厚生労働省「令和元年賃金事情等総合調査」
東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和2年版)」

退職金の比較(大卒/事務・技術職/新卒入社で定年まで勤務した場合)

厚生労働省と東京都産業労働局の調査をみると、大学を卒業してから定年まで同じ企業に勤めた場合の退職金相場は、大企業だと2,511万円、中小企業だと1,119万円となっています

次に、<東京都の従業員300人以下の企業を対象にした調査結果>をもとにしたモデル退職金の例をみてみましょう。

中小企業のモデル退職金(大学卒・新卒入社の場合)

退職には大きく分けて「自己都合退社」と「会社都合退社」の2パターンがあります。

「自己都合退社」は、転職や結婚、病気などを理由に、自分の意志で退職される場合のことです。

「会社都合退社」は、会社事情で退社される場合のことです。あまり良くないケースだと経営破綻や業績不振、事業縮小に伴うリストラなどですね。

就業規定で定年(60歳)等が定められている場合、規定を満たすと「定年退職」となります。

かつては60歳定年制が一般的でしたが、現在は定年退職の年齢を65歳未満に定めている事業主は

  • 「定年の引き上げ」
  • 「定年制の廃止」
  • 「継続雇用制度の導入」

のいずれかの措置を取るように義務づけられていて、「70歳までの定年引上げ」が努力義務(必須ではない)となっています。

さらに今後は、2025年4月より「65歳定年制」が法定化され、全企業に義務づけられる予定となっています。

退職金制度がある会社は全体の約8割 東京都内の中小企業だと65.9%

退職金制度の導入は、法で定められた義務ではありません。

従って、勤める会社によって退職金制度の有無は異なります。実際に退職金制度を導入している会社はどれくらいあるのでしょうか。

退職金制度 導入企業の割合

厚生労働省が平成30年度(2018年度)に調査した結果によると、「退職金制度がある会社」は80.5%、「退職金制度がない会社」は19.5%でした。

従業員数が多い会社ほど退職金制度を導入している傾向にありますが、それでも100%ではありません。従業員数が1,000人を超える大企業でさえも、7.7%の会社は退職金制度がないのです

実は、退職金制度を廃止する企業は年々増加しています。上記のとおり、退職金制度がある企業は80.5%(2018年)ですが、その15年前は86.7%(2003年)、25年前は92.0%(1993年)でした。

さらに、中小企業ほど退職金制度がない会社は多いのです。こちらの調査によれば、東京都内の中小企業で退職金制度があると回答した企業の割合は65.9%に過ぎません。前回調査の2018年の71.3%から5ポイント以上も減少しており、廃止企業が急増しています。

人材の流動化や雇用制度の多様化が進み、長く勤めた被雇用者を労うような勤続年数をベースにした退職金制度が時代に合わなくなってきているのは明白です。

中小企業を中心に、今後も退職金制度を廃止する企業が増加していくことは間違いないでしょう。

なお、会社の退職金規定がどうなっているのか?については、就業規則に記載することが法律で決まっています。従って、勤務先の就業規則を見ればどのような退職金規定になっているか確認することができます。

退職金の仕組みはどのように分けられる?支給方法は2パターンある

退職金仕組みは、「一時金形式」と「年金形式」の2つに分けられます。

  • 一時金形式・・・退職時に一括で支給される形式
  • 年金形式・・・・退職後、年金として定期的に支給される形式(支給期間が一定期間のものもあれば、一生涯支給されるものもある)

ひとつの制度を設けている企業、複数の制度を併用している企業があり、自社内で完結されている場合や外部機関に運用を委託している場合など、企業によってさまざまです。

退職金制度の種類はいろいろありますが、大まかな区分けとしては以下の図のようになります。

退職金制度の種類

退職金はいつ支払われる?

退職金は、退職と同時に支払われるわけではありません。勤務先の企業が退職金をどのように準備しているのかによって、支払われるタイミングは変わります。

退職金の原資を自社で管理しているのであれば、比較的早く支給されます。

外部機関(共済・保険会社・信託銀行など)で運用しながら準備している企業も多く、その場合は退職金支給のための手続きが必要のため、支給まで時間が掛かります。

実務上は、対象となる社員の退職が決まってから、規定に沿って掛け金の計算や書類作成、入金の手続きを進めていくため一定の時間がかかります。

さらに会社から直接支給される「退職金」なら準備も進めやすいですが、「退職金共済」は間に別の会社や組織を挟むため、手続きの時間が余分に掛かります。

こうした状況を加味すると、一般的には「退職後1ヶ月~6ヶ月の間」に支給されることが多いようです。

退職金の目安はいくらぐらい?

退職金の金額を調べるには、どうすればよいのでしょうか。

退職金制度を導入している企業の多くは、就業規則の中に「退職金規定」を設けています。

その場合、就業規則内に退職金の算定方法が記載されていることが殆どなので、おおよその退職金の目安は自分で計算することが出来ます。

ここでは一例として、基本給に連動するタイプの退職金を考えてみましょう。

<基本給連動型の退職金>

基本給連動型の退職金は、退職時の基本給や勤続年数、退職事由による係数を掛けて算出されます。一般的には、以下のような計算式によって計算できます。

退職金 = 退職時の基本給 × 支給率(勤続年数により変動) × 退職事由係数

支給率や退職事由係数は会社ごとに当然異なりますが、一般的に勤続年数が長いほど高くなります。また企業によっては、役職・職種・成果などに応じて係数を加減するケースもあります。

例えば勤続年数10年で自己都合退職の場合、支給率を8.0・退職事由係数を0.8と設定している場合を考えてみましょう。

退職時の基本給が30万円とすれば、退職金支給額は以下のようになります。

退職時の基本給(30万円) × 支給率(8.0) × 退職事由係数(0.8) = 192万円

退職金に税金はどれくらいかかる?

退職一時金は「退職所得」として扱われるため、所得税や復興特別所得税、住民税を支払う必要があります。

しかし「退職所得」は、全部で10ある所得区分のうち税金の負担が最も少なくなるよう配慮されていて、

  • 退職所得控除を活用できること
  • 1/2分離課税であること

の2点から、税負担を大きく軽減できるようになっています。

また税金の納付については、退職する会社を通して「退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)」を提出すれば、源泉徴収されるため確定申告は不要です。

年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除額」が適応され、公的年金と合わせて「公的年金等に係る雑所得」として税額が計算されます。

税負担の面でいえば、一時金形式で受け取るほうが、年金形式で受け取るよりも有利です。

<退職金にかかる税金の計算方法>

受け取った退職金には、所得税や住民税がかかります。所得税や住民税は、年間の所得の額に応じて課税される税金ですので、退職金の額が高いほど課税される可能性が高くなります。

ただし、受け取った退職金の全てが課税対象になるわけではありません。例えば退職金を一括で受け取った場合、勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、受け取った退職金の額から「退職所得控除」を差し引いた残りの半分に課税されます。

退職金に掛かる税金の計算式は、以下のようになっています。

(収入金額(源泉徴収される前の金額) - 退職所得控除) × 1/2 = 退職所得の金額

退職所得控除は、以下のように勤続年数によって変わる仕組みです。

  • 勤続20年以下の場合:40万円 × 勤続年数 ※80万円に満たない場合は80万円
  • 勤続20年超の場合 :800万円+(勤続年数-20年)✕70万円
<退職金にかかる税金計算の例>

勤続年数:30年、退職金:中小企業の平均値1,100万円だった方の場合を考えてみましょう。退職所得控除は、以下のようになります。

退職所得控除=800万円+(30年-20年)✕70万円=1,500万円

この場合、退職金の額が1,100万円だったら退職所得控除の範囲内となり、所得税や住民税などの税金はゼロで済みます。

仮に退職金の額が2,000万円だった場合、(2,000万円−1,500万円)×1/2=250万円となり、250万円が分離課税扱いとなります。

計算すると、所得税は約16万円、住民税は25万円程度となります。

退職金制度がない、これから備える場合はどうする?

経営者の場合:計画的に役員退職金を準備する

経営者は従業員と違って、自分の判断で退職金を準備する必要があります。

あらかじめ準備をせずに多額の退職金を現預金から支払ったり、借入金で賄ったりすると、自社の経営を大きく圧迫してしまうケースが考えられます。

高くなり過ぎた自社株の評価対策(≒自社や後継者が経営しやすいような形で株を引き継げるように、適正額に株価を引き下げる)としても、「役員退職金の活用」はとても有効です。

自社や後継者に負の遺産を残さずに済むよう、計画的に役員退職金のスキームを準備すべきです。円滑な事業承継のためにも、十分な時間を割いて計画策定にあたりましょう。

以下の記事を参考にされてください。

2022年更新:これで解決!役員退職金の確実な準備と節税を両立させる方法

 

役員、従業員の場合:自分の退職金は自分で作れる! iDeCo(イデコ)・つみたてNISA等で準備する

今のご時世、

  • 「勤務先に退職金制度がない」
  • 「退職金制度はあるけど、金額に不安がある」
  • 「これから転職・起業を考えていて、退職金をあてに出来ない」

という方はたくさんいると思います。

勤務先に退職金制度はあったとしても、これからの会社の業績や社会情勢次第では、条件や支給額などが大きく変わる可能性があります。

人によっては、家族の転勤、親の介護や病気などのためやむをえず途中退職し、退職金が減額されてしまう方もいるでしょう。

終身雇用を前提とした働き方が崩壊している今、退職金だけで老後資金を十分に賄うのはかなり難しいと思います。

勤務先の退職金有無や、制度の充実度に関わらず、会社から支給される退職金とは別の老後資金準備をしておくと安心です。

そんなとき、まず考えるべきなのは『税制優遇された長期積み立て制度を活用すること』です。

【参考記事】

詳しくは上記の記事をご参考にして頂ければと思いますが、

  • 60歳以降の年金を自分で準備できる『iDeCo(イデコ)』
  • 少額で長期間の非課税投資ができる『つみたてNISA』
  • 緊急時に低金利で融資を受けられる『小規模企業共済(中小企業の役員限定)』

など、老後資産を自分で形成するための税制優遇制度が充実してきています。

中でも、ほとんど誰でも加入出来てオススメなのは、所得税・住民税の軽減効果が高く、半ば強制的に積立できるiDeCoです。

度重なる税制改正や厚生年金保険料の値上げにより、給与から差し引かれる税金や社会保険料は、じわじわと増えてきます。

我が国の少子高齢化が本格化するのはこれからですから、今より税負担・社会保険料負担は上がることはあっても、下がることは考えにくいと思います。

そこでiDeCoなど税制優遇制度をうまく使えば、掛金が全額所得控除の対象になる上、運用して得た利益が非課税になるため、節税メリットが非常に大きいのです。

退職金不足などの不安解消や、手取り収入の目減りを防ぐためにも、まずはiDeCoをはじめとした税制優遇制度をうまく活用して、賢い資産形成をはじめてみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • 退職金の平均額は大企業と中小企業で大きな差があります。大卒・定年退職の場合の退職金額は、大企業に勤めている人で約2,500万円、中小企業に勤めている人で約1,100万円となっています。
  • 大卒の人と比べて高卒の人や一般職の人は、退職金額が低い傾向にあり、また退職事由などによっても大きな金額差があります。
  • 退職金の有無・計算方法は会社によって大きく異なります。勤務先の就業規定などで確認し、おおまかにでも自分で計算することをお勧めします。
  • 退職金は、老後生活を支える貴重な資産です。早い段階から『iDeCo』『つみたてNISA』『中小企業共済』等で資産形成を意識しましょう。

「老後資金の柱である”退職金”がなくなる日」が来るかもしれません。これからは自助努力による資産形成が一層求められることが確実です。

「退職金なんて、まだまだ先の話」と考えがちですが、将来に向けての準備は早いに越したことはありません。計画的に考え始めましょう。

優先順位としては、まずは様々な「税制優遇制度」がありますので、積極的な活用をお勧めします

そして、次にお勧めできるのは長期分散積み立て型のプランのなかの「140%元本保証型」「160%元本保証型」や、中長期にわたって安定的な運用成果を出している投資信託などです。

退職金積み立てや老後資産形成は、どのように用立てるか(制度選択/運用設計/商品選択など)によって、将来の結果がまるっきり変わってきます。

ご自身で資産形成の方法を検討される場合、信頼できる専門家に相談することをお勧めします。

なお当社では個人の長期資産形成や、中小企業の退職金制度設計、役員退職金の準備などに関しまして、オンライン・対面で無料相談を承っています。

ご相談者様に不要と思われる商品提案等は一切行いませんので、お気軽にお問い合わせください。

当記事がご参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。