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【法人保険の税制改正】損金取り扱いの最新ルールと経理処理の方法を解説!

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【法人保険の税制改正】損金取り扱いの最新ルールと経理処理の方法を解説!

公開日 2023年12月24日 更新日 2023年12月24日

2019年6月、税制改正により法人向けの生命保険と第三分野の法人保険(医療保険・がん保険など)の経理処理ルールが変更されました。法人保険は、法人税の負担を軽減したいと考える多くの経営者の方に選ばれてきましたが、経理処理ルールの変更により損金に算入できる保険料が制限されたため、昨今では税金対策に法人保険を活用するのが難しくなっています。

この記事では、2019年に法人保険の税制が改正された背景や改正後の経理処理ルールなどを詳しく解説します。

なぜ2019年に法人保険の税制が改正されたのか?

2019年2月13日、国税庁は、各生命保険会社に対して法人保険の経理処理ルールの見直しを検討している通達しました。この出来事は「バレンタインショック」と呼ばれるほど、保険業界に大きな衝撃を与えたのです。

その後、2019年6月に法人保険基本通達の改定が公表され、法人向けの生命医保(定期保険・逓増定期保険など)と第三分野商品(医療保険・がん保険・介護保険)の経理処理ルールが変更されました。

国税庁が経理処理の見直しを決めた背景には、税金対策を全面に押し出した法人向け生命保険の募集行為があります。

かつての法人保険は、会社が支払った保険料の全額または50%を損金に算入することができたため、法人税の負担を軽減したいと考える多くの経営者から支持されていました。そのため、各保険会社は法人保険で税金対策ができることを前面に押し出して積極的に募集していたのです。

これを問題視した国税庁は、行き過ぎた募集行為を規制するために、経理処理ルールの改正に踏み切りました。

税制改正により「法人保険で節税」が困難に

税制改正によって経理処理ルールが改定されたことで、法人税の軽減を目的として法人保険に加入することが難しくなりました。解約返戻金の返戻率が50%以上の掛け捨て型保険は、保険料の一部を資産計上しなければならなくなったからです。

また、そもそも支払った保険料を損金に算入できたとしても、解約時に取り出した金額の全部または一部は益金となるため、実際には法人税の課税を繰り延べているに過ぎません。

このため「法人保険で節税ができる」という認識は、もはや過去のものとなりつつあります。2023年6月現在、税金対策に法人保険を活用することは困難になりました。そのため、法人保険の加入を検討する際は、本来の加入目的を再確認することが重要です。

法人保険に加入する本来の目的は、以下のとおりです。

【法人保険本来の加入目的】

  • 経営者が万一のときの事業継続対策
  • 勇退退職金の財源確保
  • 事業承継・相続対策
  • 病気やけがで就業不能となるリスクの対策

法人保険損金算入の新ルール

税制改正により、法人保険の損金算入のルールが変更になったのは主に「法人向け生命保険」と「第三分野の法人保険」の2種類。それぞれに該当する商品は、以下のとおりです。

【法人保険の損金算入の新ルールが適用される保険】

  • 法人向け定期生命保険:定期保険・長期平準定期保険・逓増定期保険など
  • 第三分野の法人保険:医療保険・がん保険・介護保険など

法人向け定期生命保険と第三分野の法人保険では、経理処理のルールは異なります。ここでは、税制改正後の新たな経理処理ルール を見ていきましょう。

法人向け定期保険の新ルール 

法人向け定期保険は、最高解約返戻率(ピーク時の解約返戻率)に応じて損金と資産のそれぞれに計上する保険料の割合が分けられることになりました。また、保険料を資産に計上する期間も最高解約返戻率によって異なります。

具体的には、以下のとおりです。

〇解約返戻率50%以下

資産計上の期間

 

 

なし(全額損金算入)

資産に計上する額

取り崩し期間

※「保険期間が3年未満の商品」や「最高解約返戻率が50%超70%以下かつ被保険者1人あたりの年換算保険料相当額が30万円」以下の商品を含む

 

〇解約返戻率50%超〜70%以下

資産計上の期間

保険期間の開始日〜保険期間の40%にあたる期間

資産に計上する額

当期分支払保険料の40%を資産計上

(60%を損金算入)

取り崩し期間

保険期間の75%に相当する期間の経過後〜保険期間の満了日まで

 

〇解約返戻率70%超〜85%以下

資産計上の期間

保険期間の開始日〜保険期間の40%にあたる期間

資産に計上する額

当期分支払保険料の60%を資産計上

(40%を損金算入)

取り崩し期間

保険期間の75%に相当する期間の経過後〜保険期間の満了日まで

 

〇解約返戻率85%超

資産計上の期間

以下のAとBのうち、いずれか長い期間まで

 

A:保険期間の開始日〜最高解約返戻率となる期間

B:Aの期間経過後、以下の計算結果が70%を超える期間

 

(当年の解約返戻金相当額−前年の解約返戻金相当額)÷年換算保険料相当額

 

(注)資産計上期間が5年未満となる場合は5年間(保険期間が10年未満の場合は、保険期間の当初50%を経過する日まで)

資産に計上する額

l  保険期間の開始日〜10年を経過する日まで:当期支払保険料×最高解約返戻率の90%

l  保険期間の11年目〜残りの資産計上期間:当期支払保険料×最高解約返戻率の70%

取り崩し期間

解約返戻率が最高値を迎える期間経過後〜保険期間の満了日まで

 

※資産計上期間が(注)に該当する場合は、(注)の期間の経過後〜保険期間終了の日まで

※年換算保険料相当額は「保険の保険料総額÷保険期間の年数」で算出する

最高解約返戻率が50%を超える場合、保険開始日から一定期間は、保険料の一部を資産計上し、残りを損金に算入します。その後、一定期間は全額を損金に加入し、取り崩し期間に入ったあとは保険料の全額と、資産計上していた保険料を期間に応じて按分した金額の合計を損金に計上します。

税制改正後は、最高解約返戻率が高ければ高いほど、損金に計上できる保険料の割合が減り、資産に計上する割合が増えるように設定されました。

ただし、最高解約返戻率が50%超〜70%以下であっても、被保険者1人あたりの保険料が年間30万円以下である場合、保険料は全額損金となります。また、保険期間が3年未満である定期保険については、最高解約返戻率にかかわらず全額損金に計上が可能です。

経理処理の例

では、税制改正後は法人向け生命保険の保険料をどのように経理処理すれば良いのでしょうか。最高解約返戻率が55%である定期保険を例に、経理処理の仕方を見ていきましょう。

最高解約返戻率が50%超〜70%以下の定期保険は、保険期間の開始当初の40%の期間は、年間保険料の40%を前払保険料として「資産」に、残りの60%を支払保険料として「損金」に計上します。

保険期間の75%に相当する期間が過ぎたあとは、保険期間が満了するまで、すでに前払保険料として計上してある保険料を期間に応じて按分し、損金に計上していきます。

保険期間を20年、年間保険料を300万円、保険料の払込方法を年払とする場合、経理処理の方法は以下のとおりです。

【条件】

  • 保険期間:20年
  • 年間保険料:3,000,000円
  • 払込方法:年払
  • 最高解約返戻率:55%

期間

借方

貸方

1年目〜8年目まで

支払保険料 1,800,000円

前払保険料 1,200,000円

現金・預金 3,000,000円

9年目〜15年目

支払保険料 3,000,000円

現金・預金 3,000,000円

16年目〜20年目

支払保険料 4,920,000円

現金・預金 3,000,000円

前払保険料 1,920,000円

保険期間が20年である場合、開始日から40%の期間は1〜8年目までの8年間です。この8年間は、保険料の40%である120万円を資産(前払保険料)に計上します。資産計上する保険料の合計金額は「120万円×8年間=960万円」です。

保険期間の75%に相当する期間から保険期間の満了日までは、16〜20年目までの5年間です。資産計上されている960万円を、5年間で割った192万円を年間保険料の300万円と合わせて損金(支払保険料)に計上します。

第三分野の法人保険の新ルール 

医療保険やがん保険などの第三分野の法人保険については、保険料の支払期間によって損金算入できる割合が決まるようになりました。

また、保険期間が終身である商品で保険料が短期払い(保険期間が満了する前に保険料の払込が完了する方法)である場合、年間の支払保険料によっても経理処理の方法が変わります。

具体的な経理処理の方法は、以下の表の通りです。

〇全期払い(定期・終身)

経理処理の方法

法人向け定期保険と同様の経理処理

〇短期払い(終身・年間の支払保険料30万円以下)

経理処理の方法

支払保険料の総額を損金計上

〇短期払い(終身・年間の支払保険料30万円超)

経理処理の方法

【保険料の払込期間中の経理処理】

以下の計算式で求めた金額を損金に計上し、残りは資産計上

 

年間保険料 × 保険料払込期間 ÷ (116歳 – 被保険者の加入時年齢)

 

【保険料の払込期間が終了したあとの経理処理】

・保険料払込期間中に資産計上していた金額を、被保険者が116歳になるまで毎年取り崩して損金に計上

終身タイプの短期払いについては、1人で複数の医療保険やがん保険に加入していた場合、すべての年間保険料を合算し、30万円を超えているかどうかで経理処理の方法が変わります。

経理処理の例

ここでは、保険料の払込方法が短期払いであり、年間保険料が30万円以下である終身医療保険の経理処理の方法をご紹介します。

試算条件は、以下のとおりです。

【経理処理の例】

  • 保険期間:終身
  • 払込方法:年払い
  • 払込期間:10年
  • 年間保険料:20万円

借方

貸方

支払保険料 200,000円

現金・預金 200,000円

年間保険料が30万円以下であるときは、全額を支払保険料として損金に計上します。

短期払い・終身で年間30万円を超えた場合の経理処理の例

第三分野の法人保険の保険料が年間30万円を超えた場合は、どのように経理処理を行えば良いのでしょうか。年間保険料が60万円である終身型医療保険に加入したときの経理処理をシミュレーションしてみましょう。

試算条件は、以下のとおりです。

【経理処理の例】

  • 商品:終身型医療保険
  • 払込方法:年払い
  • 払込期間:5年
  • 被保険者の契約年齢:50歳
  • 年間保険料:60万円

上記のケースで保険料を経理処理すると、以下の表のとおりです。

 

借方

貸方

1〜5年目

支払保険料 50,000円

前払保険料 550,000円

現金・預金 600,000円

6年目以降

支払保険料 50,000円

前払保険料 50,000円

年間保険料が30万円を超える場合、保険料の払込期間が終了するまでは「年間保険料×保険料払込期間÷保険期間」で算出した金額を、支払保険料として損金に算入します。残りは、前払保険料として経費に計上します。

終身医療保険の場合、損金に計上する保険料を算出するときの保険期間は「116歳−契約時の年齢」。被保険者の契約時の年齢は50歳であるため、損金算出時の保険期間は「116歳−46歳=60年」です。

よって、保険料の払込期間中は「60万円×5年÷60歳=5万円」を損金に、残りの55万円を損金に計上します。

6年目以降も、引き続き5万円を支払保険料として経費に計上します。ただし、払込期間はすでに終わっているため、保険料の支払いが発生するわけではありません。そこで、これまで前払保険料として資産計上していた金額を取り崩していきます。貸方の勘定科目は前払保険料です。

2019年の税制改正後に加入した保険が対象

新しい経理処理ルールが適用されるのは、 2019年(令和元年)7月8日に契約された定期保険または第三分野保険(医療保険・がん保険・介護保険など)です。

ただし、解約返戻金がない短期払の定期保険や第三分野保険については、2019年(令和元年)10月8日以降に結ばれた契約で改正後の経理処理ルールが適用されます。

上記の日よりも前に契約された法人向け生命保険や第三分野の法人保険は、引き続き税制改正前のルールに則って経理処理を行わなければなりません。

まとめ

税制改正によって法人保険の経理処理ルールが見直されたことで、最高解約返戻率が50%を超える定期法人保険は、損金に計上できる保険料が制限されることになりました。

法人向けの医療保険やがん保険などは、全期払いである場合、定期生命保険と同様の方法で経理処理を行います。短期払いの場合、年間保険料が30万円未満であれば保険料の全額を損金に算入できますが、30万円を超えていると一定期間は保険料の一部を資産計上しなければなりません。

いずれにしても、税制改正後は法人保険を税金対策に活用するのは難しくなりました。今後は税金対策のために法人保険に加入するのではなく、万が一の事態に備えて事業保障や退職金の財源確保など、本来の保険加入目的をもとに必要性や商品、保障内容を検討することが大切です。