保険アンサー

運営:株式会社トータス・ウィンズ

中小企業の保険の
悩みを解決する
メディア

HOME/ コンサルタントコラム/ 2020年代は保険業界でも革命的な構造変化が進む?インシュアテック AI・DXはどこまで浸透するか

2020年代は保険業界でも革命的な構造変化が進む?インシュアテック AI・DXはどこまで浸透するか

経済、ビジネス マネー
2020年代は保険業界でも革命的な構造変化が進む?インシュアテック AI・DXはどこまで浸透するか

公開日 2021年10月4日 更新日 2021年11月11日

保険のAI・DX導入 人口の構造変化に伴う市場縮小がカギに

生損保業界を取り巻く環境が大きく変わってきています。日本人の「保険好き」は有名ですが、我が国の保険会社が提供する保険分野は以下のとおり実に幅広く、その種類は実に多種多様です。

・第一分野・・・人の生存、死亡を原因とした保障を提供する保険(死亡保険や年金保険など)
・第二分野・・・偶然の事故を原因として生じた損害を補填する保険(自動車保険や火災保険など)
・第三分野・・・いずれにもあてはまらない保険(医療保険や介護保険など)

国内で営業する保険会社は2021年10月1日現在、第一分野と第三分野を扱う生保42社、第二分野と第三分野を扱う損保55社もあります。

日本は生保では世界2位、損保では世界4位の市場と言われており、その加入率は世界トップクラスで堅調に推移していますが、少子高齢化やライフスタイルの多様化から、保険に対する意識が変化しています。

数年後、日本では2025年に団塊の世代がすべて75歳を迎えて後期高齢者となります。これは全人口の5人に1人にあたり、65歳以上を含めると3人に1人に及びます。

「総人口」と、「15歳以上65歳未満の生産年齢人口」が同時に減少して少子高齢化が進行しているのは先進国では日本だけで、この問題は「2025年問題」といわれています。

さらに、2035年には団塊ジュニアが65歳以上となる一方で団塊の世代は85才以上となり、寿命を迎える年齢に差し掛かります。その際、爆発的に介護サービスの需要が増加する「2035年問題」の発生が懸念されています。

このような人口構造変化が急激に進む中で何が起こるでしょうか。

保険業界特有の問題としては、人口が減ることで新規契約が減少して保険市場そのものは今より縮小するでしょう。ところが反比例して高齢者顧客への契約フォローの必要性は高まり、病気や手術などに伴う保険金請求は大幅に増加することが考えられます。

失礼を承知で一言でいえば、「契約者/被保険者が高齢化するので今より大幅に手間が掛かるようになる」ことが問題になると思われます。

それらの問題解決のために注目されているのが、最新テクノロジーの活用です。

最新のテクノロジーの活用 インシュアテック

近年、ビジネス誌や新聞でAI・DXの文字を見ない日は無いといっても過言ではありませんが、保険業界におけるAI・DX活用を意味するのが「インシュアテック(InsurTech)」という造語です。

これは保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を掛け合わせた造語で、経済産業省が2017年5月に発表した「FinTech ビジョン」で“保険分野における「FinTech」は、「InsurTech(インシュアテック)」と呼ばれている”と記述されて脚光を浴びるようになりました。

インシュアテックを解説しているこちらのサイトによると、「インシュアテックとは保険会社を中心とした革新的な保険ビジネスモデルそのもの」と定義されています。

・・・と言われていますが、少なくともコロナ禍前までは、知識として理解しつつも実際の業務面において、そこまで革新的な構造変化の兆しを感じることはなかったように思います。

私が肌感覚で感じていたのはどちらかというと、営業職員の募集ツールがタブレット端末に置き換わったり、紙の約款が廃止されてWEB約款になったりといった「デジタル化の推進」でした。

人為的なミスの防止や紙の帳票廃止に伴う無駄の削減といった事務効率化の側面が大きく、「ビジネスモデルそのものが変わる」というような兆しは、個人的にはまだまだ先のことのように感じていました。

コロナ禍をきっかけに一気に進んだインシュアテック

良くも悪くも今のままのビジネスモデルではまずいと追い込まれ、インシュアテック推進の必要性を一気に実感せざるを得なくなったのは、コロナ禍以降のことです。

緊急事態宣言の発出によりステイホームが推奨されたことにより、営業職員がお客様に会えなくなり、事務職員が出社できなくなりました。

保険というのはその性質上、個人情報・センシティブ情報の塊のようなところがありますから、保険業界においてデジタル化は推進しつつもそれはあくまで事務効率化のためで、肝心要のところは「対面」「集合」「アナログ入力・出力」を是とする文化が少なからずあったと思います。

しかしコロナ禍で人と人とが容易に接触出来なくなったことは、保険業務そのものが従来のやり方を前提としては成り立たなくなるほどの大きなインパクトでした。

そのためコロナ禍をきっかけに、従来は禁止行為とされていたZoom等によるオンライン募集が解禁されたり、申し込みや保全、保険金請求といった事務処理がオンラインで顧客が自ら行えるようになったりと、目に見えてビジネスモデルそのものがデジタル化し始めたのです。

こちらのサイトから、インシュアテックの推進例について抜粋します。

 

 生損保各社の活動を見ると、インシュアテックの取り組みは3種類に大別できる。新たな保険商品の開発、顧客向けサービスの改良、バックエンド業務の高速化や効率化である。

 新商品については、先に挙げたWarrantee(注:1日から加入できる家電修理補償サービス)のオンデマンド保険のように契約期間をきめ細かく設定できるほか、従来よりも精緻にリスク分析して多くの人が加入しやすくする。

 サービス改良は契約者からの問い合わせへの応答や契約内容の確認、保険料の見積もり、住所変更などに生かしやすい。スマホのチャットアプリを使って問い合わせや保険料の見積もりなどを受け付け、利用者の手間を減らす企業も増えている。

 バックエンド業務の本命は、保険料の査定、契約締結の手続きである「引き受け」、住所や名義を変更する「保全」などの効率化だ。保険会社のIT活用の中核領域であり、これまでは数十年にわたりメインフレームを中心に構築した基幹業務システムが担ってきた。最近では定型作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)技術などの先進ITを導入する動きもある。インシュアテックはこれまでの効率化の取り組みをさらに加速させる役割も担う。

 

最近個人的に驚いているのは、引き受け査定業務の効率化に伴う超スピードアップです。

10年ほど前、保険の申し込みから契約の成立までの所要日数は、肌感覚ですが5~10営業日ぐらいが平均だったように思います。お客様の健康状態があまりよくなく追加告知が必要になったケースや、リスクが大きい案件で再保険会社の査定が必要となってしまったケースなどでは、成立まで1か月以上を要する場合もありました。

時間が掛かっても無事成立すればまだいいのですが、被保険者の誕生日を過ぎてしまったり法人契約で決算を過ぎてしまったりすると契約の前提条件が狂ってしまいます。査定に時間が掛かりすぎることが、大きなもめ事の原因になりかねない場合がしばしばあったのです。

ところが最近は引き受けの一次査定をAIが行なう保険会社が出てきていて、引き受け査定完了までにかかる日数は早ければわずか1~2日程度です。一昔前に比べると隔世の感があります。

まとめ

コロナ禍によって、AI・DXによる利便性向上ニーズはますます増えてきています。

そのニーズに応えるべく、インシュアテックなどデジタルテクノロジー活用により、これから契約者にとってますます価値のある商品・サービス提供が実現されていくでしょう。

それは同時に、先進的なテクノロジーに付いていけない人が取り残されるというデジタルディバイドの問題を発生させかねません。そしてインシュアテックは今のところ、保険加入した後のもっとずっと本質的な問題・・・「そもそも難しくて覚えてられない」「誰が契約を適切に管理するのか」といった問題の根本的な解決策には今のところなっていません

私はこれからもお客様の保険選びと維持管理、保険金請求などを総合的にサポートする立場として、今後のインシュアテックの行く先を注視していきたいと思います。

ご参考になれば幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。