ペット保険業界2強の一角を占めるアイペットホールディングスに対し、大手生命保険の第一生命ホールディングスが株式公開買い付けを実施し、完全子会社化すると発表した。背景にはペット保険業界の競争激化があり、今回の動きがペット保険業界再編の呼び水となり得る。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)

第一生命のアイペット買収の背景に
ペット保険業界の厳し過ぎる現状

生命保険大手の第一生命ホールディングス(HD)が、ペット保険会社大手のアイペットHDに対し、株式公開買い付け(TOB)を行うと発表した。アイペットはTOBに賛同しており、55.87%の株式を保有する投資ファンド、ドリームインキュベーターなどから390億円を投じて全株を取得し、完全子会社化する。

ペット保険は犬や猫などのペットが病気やけがをして、手術や入院などでかかった治療費の5~7割を補償する商品。アイペットHD傘下のアイペット損害保険は、21年度の収入保険料が276億6700万円で、同474億9400万円のアニコム損害保険に次ぐ業界第2位に位置する、ペット保険2強の一角だ。

そんなアイペットHDと第一生命HDは、2019年2月に業務提携を結んでから関係を深めてきた。第一生命は所属する約3万7000人の営業職員を通して、アイペット損保のペット保険を販売。業界では、「ペット保険はドアノック商品として最適」(大手ペット保険会社首脳)と考えられており、新規顧客開拓のツールを充実させたい第一生命と、少しでもシェアを伸ばしたいアイペットHDの思惑が一致したわけだ。

今回の完全子会社化に至った理由として、第一生命はペット保険の高い成長性を、アイペットHDは今後の持続的な成長のための新たなパートナーが必要だった点を挙げている。

確かに、ペット保険市場は毎年2桁成長を続けており、21年度には1000億円を超えた。さらに日本全国の犬・猫飼育頭数の保険加入率はわずか12~13%程度といわれ、伸びしろはまだまだ残されている。

だがペット保険業界内では、両社の距離を近づけた背景には成長の追求よりも、ペット保険を取り巻く厳しい事業環境があるという見方が大勢だ。次ページで、「三重苦」ともいえるペット保険業界の厳しい現状を解説していこう。

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