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【東京 相続・事業承継 最新ニュース】〈日本企業の実情〉経営者の平均年齢63歳、赤字の法人企業65%…中小企業の高齢社長「廃業」が決断できない切実な背景【公認会計士が解説】

相続・事業承継

ニュース概要

岸田 康雄 2023.11.9
 

中小企業経営者のなかには、経営する会社について、いつどのように廃業するか頭を悩ませている方も少なくありません。国や都道府県が運営する相談窓口には、事業承継の相談の7倍もの廃業の相談が寄せられているといいます。今回は、廃業という課題について見ていきましょう。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

全国の法人企業、約65%は赤字…「後継者探し」は容易ではない

生徒:日本では、経営者の高齢化が問題となっています。東京商工リサーチの2022年の調査によれば、全国の社長の平均年齢は63歳だそうですね。

先生:高齢の経営者にとって、事業承継は大きな課題です。一般に中小企業経営者は、自分の子息・親族・従業員から後継者を探します。黒字体質で将来性のある企業なら、後継者が見つからなかったとしても、社外から経営者を招聘したり、M&Aで事業を売却したりすることができます。

生徒:最近は中小企業のM&Aも増えていますね。

先生:しかしながら、国税庁によれば、全国の法人企業の約65%が赤字だといわれています。赤字体質で将来性がない企業は、後継者を見つけることも、売却先を見つけることもままなりません。そのため、多くの経営者が「自分の代限りで廃業しよう」と考えているのです。

生徒:淘汰されていくのは仕方ないですね…。

先生:それに加え、コロナ対策で導入された「ゼロゼロ融資」、すなわち、無利息・無担保の融資について、2023年の夏から元本返済が本格的に始まりました。多くの企業が返済資金を手当てするメドを立てられず、資金繰りに困っています。これが原因で、廃業を検討する経営者がさらに増加したのです。

生徒:2023年10月から導入されたインボイス制度の影響はあるのでしょうか?

先生:企業の負担は増えますから、「課税事業者になるくらいなら、廃業したほうがいい」と考える経営者が出てくることも考えられるでしょう。

廃業の決断を鈍らせる、従業員・メインバンクからの「お願い」

生徒:ところで「廃業」といっても、いまおこなっている事業をやめるだけのことではありませんか? 古いビジネスがなくなり、新しいビジネスが誕生するということですね。日本経済の新陳代謝が行われることで、なにが問題となるのでしょうか?

先生:廃業を進めることそのものには、なにも問題はないのですが、その手続に多くの難題が待ち受けているのです。とりわけ問題になるのが、借入金の返済です。会社が保有する資産が借入金を上回る状態であれば、資産を売却して借入金の返済に当て、円滑に廃業することができます。しかし、資産が借入金を下回る状態であれば、廃業すると借入金だけが残ってしまいます。経営者個人からの借入金であれば、法的に消滅させる方法があるのですが、これが銀行借入金だと困ったものです。

生徒:返済できないなら、法的に破産させればよいのではないでしょうか?

先生:多くの経営者が会社の借入金に個人保証をしています。そのため、会社が破産すると、借入金の返済が経営者個人に回ってくるのです。個人財産を使って返済できればいいですが、それができなければ、経営者は自己破産に追い込まれてしまいます。

生徒:自己破産は避けたいですね…。

先生:そうなのです。資産が超過する健全な状態のうち、早めに廃業を決断すればいいのですが、実際のところ、多くの経営者はその決断ができず、ズルズルと先延ばしにしてしまいます。

生徒:経営者は経営改善できると信じ「もう少し辛抱すれば業績が回復するだろう」と思っているからでしょうね。

先生:そうですね。それに加え、従業員や金融機関が事業の継続を強く要望することも、廃業の決断ができなくなる大きな理由となっています。「廃業に抵抗する圧力」が大きいのです。

生徒:私の知り合いの高齢の経営者の話ですが、「近いうちに廃業したい」と従業員に打ち明けたところ、50代後半の従業員から「年金が出る7年後まで、なんとか廃業しないでほしい」とお願いされたそうです。ほかにも、メインバンクに相談したら支店長が出てきて「リスケには応じる。利息さえ払ってくれれば不良債権の扱いにならない。私が支店長をやっている間は、絶対に廃業しないで…」と、お願いされたと聞きました。

先生:銀行員もサラリーマンですから、お客様の利益よりも自分の利益を優先することが多いですね…。

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